東京高等裁判所 昭和59年(ラ)168号 決定
よって検討するに、原審記録及び当審における高橋一雄に対する審尋の結果によれば、抗告人は、原決定別紙物件目録記載の各土地について昭和四九年一〇月三〇日付で設定登記を経由した抵当権に基づき本件競売申立てをし、昭和五七年六月一八日差押登記を経由したものであるところ、右各土地については、抗告人の右抵当権に優先するものとして、高橋一雄の仮登記担保権(以下「本件仮登記担保権」という。)が存在し、同人は昭和四九年八月二三日売買予約を原因として同月二四日所有権移転請求権仮登記を経由していたこと、その後昭和五二年一二月二二日付で大江淳一のため、続いて昭和五五年一〇月三日付で寺島憲一のため右所有権移転請求権の移転の各付記登記が、更に同月六日付で唐木田産業株式会社、昭和五七年五月二八日付で大塚敏男のため右請求権の一部移転の各付記登記がそれぞれ経由され、現在寺島憲一が持分一六分の三、唐木田産業株式会社が持分四分の三、大塚敏男が持分一六分の一の割合で本件仮登記担保権を共有していること(上記三名を以下「寺島ら三名」という。)、以上のとおり認められる。
右認定の事実関係によれば、本件競売手続において、民事執行法一八八条により準用される同法六三条一項にいう差押債権者(抗告人)の債権に優先する債権の額は、寺島ら三名の有する本件仮登記担保権の被担保債権の現存元本額及び利息、損害金(最後の二年分)であり、この場合、抗告人の債権に優先するものとされる右現存元本額は、高橋一雄が取得した本件仮登記担保権の当初の被担保債権の元本額を上回るものではありえないと解されるところ、抗告代理人が原裁判所に提出した昭和五七年一一月二四日付上申書(二)添付の借用証写し、高橋一雄に対する前記審尋の結果(なお、右審尋の結果によると、原裁判所からの審尋書が同人に届かなかったのは、宛先住所が誤っていたことによることが明らかである。)によれば、本件仮登記担保権の当初の被担保債権の元本額は金二五〇〇万円を上回るものではなかったことが認められる。そして、これに対する損害金の約定利率が日歩四銭であったことも、右審尋の結果により明らかである。
そうすると、前記各土地の最低売却価額金六五六四万円では手続費用及び優先債権(多くとも、右元本額と最後の二年分の右利率による損害金の合算額)を弁済して剰余を生ずる見込みがないとはいえないことが明らかであり、原裁判所が、本件においては、寺島ら三名から提出された債権届出書の記載に基づいて剰余を生ずる見込みの有無を判断するほかないとしたうえ、右記載によるとその見込みがなく、本件競売手続を取り消すべきものとしたのは、違法といわざるをえない。
(鈴木 仙田 河本)